本気のやり取りを通じて、世界を変える仲間になる

本気のやり取りを通じて、世界を変える仲間になる

本記事は、2024年03月発行の人材応援冊子 Vol.23「本気のやり取りを通じて、世界を変える仲間になる」に掲載されたインタビュー記事をもとに、ウェブ掲載用として再編集したものです。

話し手

鈴木 瑠花 氏
2021年私立酒田南高等学校グローバル専攻1期生として卒業。2022年武蔵野大学アントレプレナーシップ学部に2期生として入学し、ユニリーバ・ジャパンや認定NPO法人ピースワンコ・ジャパンインターン生として活動しつつ、学生団体わーくしょっぷ屋さん共同代表や、わんこを迎える準備をサポートするサービスを提供しているOtetote代表として活動している。

矢吹 凌一 氏
2015年渋谷教育学園幕張高等学校卒業。2016年東京大学入学、2022年同大学院薬学系研究科修士課程修了、現在は同博士課程2年。2023年東京大学科学技術インタープリター養成プログラム修了(16期生)。専門である細胞生物学の研究と並行して、自由研究の自由研究に取り組む。夢は60歳年下の人の心に残る仕事をすること。

聞き手

井上 浄
株式会社リバネス 代表取締役社長 CCO

博士(薬学)、薬剤師。2002年大学院在学中にリバネスを設立。博士課程修了後、北里大学理学部助教、講師、京都大学大学院医学研究科助教、慶應義塾大学特任准教授を経て、2018年より熊本大学薬学部先端薬学教授、慶應義塾大学薬学部客員教授に就任・兼務。研究開発を行いながら、大学・研究機関との共同研究事業の立ち上げや研究所設立の支援等に携わる研究者であり経営者。多くのベンチャー企業の立ち上げにも携わり顧問を務める。

「世界を変えたいが、何からやったらいいのかわからない」という悩みや「これがやりたい!」という野望を持った学生に10万円を準備し、ゼミ形式で各々の活動を推進するリバネス奨学金。2023年の第一期ではリバネスの東京本社・大阪本社で計37名の学生が採択された。今の学生はどのようなことを考え、世界を変えるためにどんなチャレンジをするのか。そして、学生を応援する側がやるべきことや持つべきマインドセットは何か。第一期「東京井上ゼミ」の奨学生として活動した矢吹さん・鈴木さんと、ゼミ長を務めた井上浄が語る。

熱い想いをもった、
何かやりたい人が集まる場所

井上:こうして二人とリバネスで会うのは、2023年の4月から6月に実施していたゼミ以来ですね!矢吹くんは「小中学生の夏休み自由研究支援活動」、鈴木さんは「地方と都市の成長機会の格差を是正するために学びの広場をたくさん創りたい!」というテーマでリバネス奨学金の活動を始めていました。そもそも、なぜ奨学金に応募したんですか?

矢吹:知り合いがたまたまネットで見つけたのを教えてくれたのがきっかけです。その時は、ちょうど小中学生の自由研究を応援するYouTube動画を作り、小学生向けのワークショップを実施した後のタイミングでした。もう一回何かをやりたいと考えていた時にリバネス奨学金のことを教えてもらい、やりたいことを10万円でできると書かれているのを見て応募しました。

矢吹:もともと中高では化学部に在籍して、研究をしていました。それと、文化祭では実験ショーを行っており、実験を通じて科学を伝える活動をしていました。しかし、相手の小中学生や保護者の方に、科学の話がなかなか伝わらないことがずっと心に残っていて、科学コミュニケーションに関心をもつようになりました。今、自分は大学院で研究をやっていますが、研究者ではない方々との繋がりを大事にしたいと思い、実はリバネスの研究コーチ活動を通じてサイエンスキャッスルのポスター審査員なども行っていました。その時に来た奨学金の話だったので、もうやらない理由がないんじゃないかと思って応募しました。

井上:リバネスのことは知っていて、タイミングもバッチリでしたね!鈴木さんは?

鈴木:私は、自分が高1の時に東京で起業や事業を考えるプログラムに参加したことがあります。その時の参加者はほとんどが東京や大阪出身の人で、地方の東北出身なのは私だけでした。同じ年なのに地方に住んでいるだけでこんなに社会のことを考える機会に差があるのは納得がいかないなと思って、地方でもそういう中高生向けのプログラムが作れないかと思ったのが最初のきっかけです。

井上:地方出身者としての課題感があったわけですね。似たような課題感を持った人はいると思いますが、多くの人はそのまま東京に出てくるじゃないですか。なぜ自分が地元でやらなきゃと思うようになったんですか?

鈴木:当時、高校の同級生とも同じような課題感を話していたんです。高2になったときにその友達と、地元でできるそういったプログラムを企画して後輩に対して実施したら、結構好評でした。大学に進学したら学生団体を発足して、夏に地元酒田市で5日間のワークショップをやりたいと考えていました。ただ、実施する会場・人集めなどで何も予想がついていない段階で、資金が足りないという話をチームでしていた時に、ちょうどこの奨学金のお知らせが来て、これを使ったら今の想定よりも大規模で実施できるのではないかと思い、応募しました。

井上:実際に応募してみてどうでした?

鈴木:申し込み者の説明会に参加した時には、大学院生や自分とは全く違う活動をする人たちに出会い、こんな人たちと関われることは自分にとってまたとない機会なのではないかと思いました。ここで様々な人と関わることが社会に出る際にきっと役立つし、コミュニティもすごく広がると思ってこれは受かるしかないなと。

井上:ここは自分の活動や考えていることを熱く語るような、一見変わっている人が多く集まるところですよね。リバネスとしては「何かやりたいって思ってる学生がたくさんいるんじゃないか」っていう仮説でこの奨学金を始めたんですよ。もちろん研究に集中することも大事ですが、何か自分の活動としてやりたいことがあった時に、一歩踏み出せる機会があるとみんなの勇気になるんじゃないかと。リバネス自体も21年前に会社を立ち上げる時にお世話になっていた人から「あんたたちは、なんかよくわかんないけど、面白いことやろうとしてる。それに対して応援をしたい」と10万円を出してくれました。自分たちの活動に対して応援してくれる人がいるってことにとても勇気をもらったんですよね。そして、その10万円を使って、本気で世界を変える活動を始めようと覚悟が決まったんです。そんな魂のこもった10万円を使ってみんなも次の活動を作ってほしいというのが、僕らから奨学金10万円に込めたメッセージです。二人が第一期生というタイミングで応募したというのは、運命のようなものを感じますね。

「世界を変える」が
実感値に変わる

井上:初めて会った時、矢吹くんは博士学生というオーラが出ていて、どこか芯が強いものを感じました。鈴木さんはEMC※の学生で、もともと行動力のある人ということは知っていました。そんな2人は学生の立場としても結構違うと思うのですが、今回奨学生としてゼミに参加して何か変わりましたか?

矢吹:1年で自分が変わってきている感じがします。実は奨学金に応募する前は、アントレプレナーとかは全く興味がなかったんです。小学生の自由研究についてちょっと活動したことがあって、「自由研究で何かしたいな」くらいの気持ちでゼミの活動を始めたんですが、ゼミが終了した頃には、自分のやりたいことに対して思わず行動している自分がいました。

井上:へえ。どういう気づきがあって、どんな行動をしたのかが気になります。

矢吹:ゼミでは「6割で出せ」と浄さんはよく言っていましたが、自分の場合は「自由研究に関する何かをしたい」っていう生煮えでもアイデアを外に出したからこそ、ゼミで一緒に活動する鈴木さんや、ミミズが大好きで研究している遠藤くんっていう別の奨学生の仲間が見つかりました。3人で小学生向けのワークショップを企画して、ミミズの自由研究を広げてみようと動く中で、少しずつ自分がやりたいことが見えていった感覚があります。その結果の一つとして、自己紹介するときのキャッチコピーで「自由研究の自由研究をしています」というのが作れました。その後、自由研究に関するイベントをやってみたいと思って起業コンテストに応募してみたりもしました。結果はダメでしたけど。

井上:矢吹くんの中で変化が起こっていったんですね!そういうコンテストに申請するって、以前の矢吹くんだったら想像できなかったでしょう。

矢吹:できなかったですね。

井上:鈴木さんはどうですか?

鈴木:大学の授業で世界を変えるという話は何度も聞いていましたが、今回初めて本気で世界を変えることに実感が湧きました。初めはやりたいことはあるけど、それで世界を変えるってどういう未来なんだろう?という感じでした。「世界を変える」が実感できたきっかけは、ゼミの中で自分がプレゼンテーションしている時でした。自分はただ、地方出身だからこそ感じた都市部との経験値の差に悔しさを感じ、そのような思いをする中高生を増やしたくないと思って活動していました。でもゼミで浄さんに、「世界を変えるためにどうするの?何が新しいの?」と聞かれたときに、自分が行ってきた活動が、まずは地元の酒田を変えるだろうと思えたんですよね。そして、日本、世界と変えられるんじゃないかと自分の中で繋がった気がしました。

井上:僕も大学では「世界を変える」という話をしていましたが、自分が活動したことを通じて実感が湧くようになったというのは、とても嬉しいですね。ゼミの中でもいろいろ話したと思いますが、印象に残っている話や言葉はありますか?

鈴木:桃太郎の話が印象的です。

井上:桃太郎?そんな話しましたっけ(笑)?

鈴木:桃太郎は、最初はきび団子しか持ってないけど、サルとかキジとか犬がついてきて、鬼退治という目的を達成している。だから、最初に全部持っておく必要はないんじゃないかとお話ししていました。これを今の自分に置き換えると、きび団子が自分のアイデアや想いともらった10万円で、自分と桃太郎は大差ないと感じました。最初の頃は、何かを始める前にお金を用意してあれもこれも準備して、、、と自分の中である程度の筋道を立てた上でフォロワーをつけて行動するという考えでしたが、そうではないと自分の考えも変わりました。

井上:リバネスでは、よく「武器は走りながら拾え」と言っています。これは、動かなければ何も始まらないので、まずはやってみるという考え方。ビジネスモデルを考えてばかりいても始まらない。僕らは活動家で、失敗してもいいから、リスクをとってとにかく動いてほしい。そのための10万円なので、「いいからやってみな!」という言葉が響いたことはすごく嬉しいです。

10万円が
どんな価値に変わるのか

井上:僕らとしては意味を込めた10万円ですが、実際どのようなことに使いましたか?

鈴木:先ほど後押しというお話がありましたが、私もこの10万円をもらって初めて、自分たち学生の活動に対して応援してくれる人がいるんだというのを感じました。その10万円はワークショップ時のご飯代だったり自分たちの移動費に使って、実際に5日間無事に実施できました。最後には他に応援してくれた地元の人たちにプレゼンテーションをして報告を行うと、プログラム終了後も中高生のアイデアを実現するために地元のお祭りを使ってイベントブースを開いていいよというお話をもらったりしました。中高生に何か機会を与えるという自分たち学生の活動を応援してくれる大人がこんなにもいるんだということを実感しました。最初の10万円がきっかけで結構酒田を変えてきているなっていうのを感じます。

井上:熱いですね!活動は今後も続けていけそうですか?

鈴木:今は3月に実施する二回目のイベントの準備をしていますが、以前知り合った行政の人に、そこに参加する中高生の発表会のコメンテーターとして協力してもらっています。さらには、この活動をどのように持続可能な形にできるかということを学生団体だけで考えるのではなく、企業の人や行政の人とも相談できるようになりました。市の取り組みや予算を活用しながらできる形を考えてくださる人もいて、一気に酒田で協力してくれる人が増えました。

井上:動きながら巻き込む、いいですね!企業からも協力してもらえそうですか?

鈴木:そうですね。地域との関係性を重要視している企業さんたちがいて、今なら巻き込んでいけそうな気がします。

矢吹:自分の場合は、ぼやっと自由研究に関することを何かやりたいなーってところから活動に入ったのでお金に関しては何も考えていませんでした。これに使ったっていう回答があまりなくて。強いて言うなら、ミミズの研究をしていた奨学生の遠藤くんとともに、ミミズの自由研究に出会いたいと思って探しに行ったことですかね。ネットで調べてもあまり出て来なかった時に、自分が中高生時代に出していたコンテストで、作品を一般公開していたことを思い出して、そこに行けば自由研究が見られるのではないかと思いました。いくつかの県に問い合わせて、一般公開をしていた千葉・神奈川・茨城の3県に足を運び、各地域数百演題ほどの自由研究が展示されているのを見てきました。奨学金は、そこに行く交通費に使いました。浄さんの「自分に投資しろ」という言葉が印象に残っていますが、こういうのを自分への投資と言うのかもしれませんね。

井上:自分のためにお金を使って行動し、情熱を育てていく。大事な考え方ですね。実際に一般公開に行ってみてどうでしたか?

矢吹:感動と落胆でした。単純に科学的好奇心でいろんなことを調べる小中高生がこんなにもいるんだということに感動しました。実際に一番すごいと感じたのは、8年間植物の観察をして、段ボール一箱分の記録ノートも展示していた自由研究です。自分は今博士課程の2年で、研究5年目です。細胞生物学の研究を5年もやっていると思っていましたが、同年代でもなく、自分よりも若くて長い期間研究している人がいて「自分はまだまだだな」と思いました。どこの一般公開に参加しても、そんな科学的探究心を持った小中高生が何人もいて、本当にすごいと思いました。

井上:なるほど、「やべえ、自分は研究を5年しかやっていないぞ」と気づいたんですね。逆に落胆したことは何ですか?

矢吹:落胆したことは、果たして自分はこれだけの科学的探究心を持って大学院で研究をやれているのかということです。自分自身に対して、研究は学位のためにやっているんじゃないか、研究室のためにやっているんじゃないか、と思ってしまい、今一度本気になって研究をやらないといけないなと思いました。今年度は自分の活動もやってきましたが、来年度は研究に注力して博士号をとり、研究者としての自分に自信が持てるように頑張ります。

井上:サイエンスキャッスルで中高生の研究を聞きに来た教授のみなさんも言ってますよ。研究費取るために申請書を書くことで頭がいっぱいになっていたけど、中高生の純粋な研究発表を見て、「これだよ、サイエンスの原点は!」って言って笑顔でラボに戻っていきます(笑)。

矢吹:アカデミアじゃないけど、そういう見えないところの研究成果がたくさんあるということを知りました。だから、もっとすくい上げられるんじゃないかと。自由研究みたいな研究を、もっと応援するような仕組みがあったらいいよなって、本当に思ったんです。自分はどう生きるべきかというのを考えた際に、そういう自由研究を応援する仕組みづくりをやりたいって思ったんですよね。自由なサイエンスを発掘して、それがちゃんと認知されるような世界を作っていきたい。そうしたら、アカデミアの基礎研究を含めて、自由な研究を真剣に応援するような世の中の風潮になると思うんです。

井上:自分に投資して外に出て、動いたからこそ見えてきた世界ですね。ぜひ今後一緒にやりましょう!でもまずは研究して博士号をとるということだったので、研究者の仲間として絶対に達成してください。

個のネットワークを持つ人が
仲間になると
大きなことができる

井上:ゼミ長としてゼミを実施するときに考えていたことは少しずつ話してきたんですが、参加する側の二人の立場ではどんな心構えで臨んでいたんですか?

矢吹:ゼミでは、うまくいったこと・いかなかったことはもちろん、自分の正直な気持ちとかも含めて何を言っても大丈夫という心理的安全性がありました。ゼミ長の浄さんが包み隠さず厳しいコメントをくれたのも、本気で自分の活動が世界を変えることを思ってのことだというのが伝わってきました。

鈴木:私は厳しいコメントをもらうためにゼミに来ていました。浄さんは私を生徒というよりは対等な1人の人間として見てくれていた気がして。私が行っている活動は、他ではすごいと褒められることが多かったのですが、自分一人では満足して活動の進展が止まってしまいかねないところを、ゼミでは厳しい意見をもらってネクストステップに行く道筋を示してくれました。

井上:僕自身も、みんなとともに世界を変える仲間になりたいと思っていたからですね。ゼミの最初には、「本気でぶつかってきてください。こっちも本気で応えます」って言ってましたよね。

矢吹:さらに、自分以外の奨学生も、自分なりの動画※を提出し審査を経て、ここに集まった人だからよっぽど変わり者で本気なんだなと思っていました。ある意味自分と同じで信頼できて、何を話しても大丈夫という感覚でした。これが書類審査のみで選ばれている人だったらまた感覚は違うと思いますし、鈴木さんたちともこれがなかったらそもそも出会ってないと思います。

井上:教える訳ではなく、仲間という意識があるからですね。「なぜリバネスでは面白いことが次々できるのか?」とよく聞かれますが、メンバーの一人ひとりが独自の面白い人の繋がり「個のネットワーク」を持っていて、それぞれのネットワークを合わせると1+1以上に広がって相乗的に大きな面白いことができるようになるんです。ここに来ている奨学生メンバーも、みんながそういう仲間だなと。ずっと長く一緒にいる訳ではないですが、濃いやりとりを瞬発的に多く重ねて強い関係性を築く。ふと何か面白いことを思いついたときに、お互いにすぐ連絡出来て、あっという間に共鳴して動ける。リバネス奨学金はそういう貴重な仲間が作れる場所ですね。もしさ、この先僕から「面白いプロジェクトを仕掛けるから集合!」って連絡来たらどうする?

矢吹・鈴木:絶対行きます!

井上:嬉しい!この先も、ぜひ一緒に面白いことを仕掛けていきましょう!

(構成・吉川 綾乃)

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