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高校時代から足掛け7年、海への興味を軸に活動する「研究者」

本記事は、2023年12月発行の人材応援冊子 Vol.22「2025年の分岐点」に掲載されたインタビュー記事をもとに、ウェブ掲載用として再編集したものです。
話し手
北海道大学大学院 環境科学院 生物圏科学専攻 修士2年
佐藤 寛通 氏
「海底の詳細な地形図はまだない」「海からは毎年何十種類もの新種が見つかっている」。高校生の時に研究者から聞いた話がきっかけとなり、海の生物に関する研究を本格的に開始。日本財団が主催する研究プログラム「マリンチャレンジ」に採択され、優秀賞に輝いた。その後も大学で海洋モデルの研究を開始し、2023年にはリバネスが主催するシードアクセラレーションプログラム「テックプランター」に参加した。そんな佐藤さんは、海への興味を軸に、挑戦を続ける修士2年の学生だ。
高校時代から
自らテーマを見つけ、
活動する
「CO2がミズクラゲの捕食活動に与える影響」。これは佐藤さんが高校生の時に取り組んだ研究だ。水槽に餌を入れた瞬間にミズクラゲが反応する様子を観察し、「クラゲは触手に触れた餌だけを認識し捕食している」という定説に疑問を持ったのがきっかけだったという。海に関する研究を支援する「マリンチャレンジプログラム(主催:日本財団)」に応募し、研究費を自ら獲得して研究を行い、ミズクラゲが餌を認識するのに水中に溶けた二酸化炭素などの物質を利用している可能性を発見した。
一部のスーパー高校生が優れた研究者として活躍する例はこれまでにもあったが、今や多くの高校生が佐藤さんのような研究活動を高校時代から実践している。事実、佐藤さんが通っていた高校ではチームまたは個人で「卒業研究」を全員が行うというカリキュラムになっている。近年の文部科学省の学習指導要領の改定により、教育現場は受動的な学びから主体的な学びに大きく転換し、多くの学校で生徒が自ら探求したいテーマを見つけ、研究や開発に取り組むようになった。
自分の興味が
社会の課題解決と
繋がった
高校卒業後、北海道大学の水産学部に進学した佐藤さん。理系に進学しても大学1〜3年生は座学の授業が中心で、研究室配属は3年生の後半以降であることがほとんどだ。しかし、佐藤さんは大学1年生の時から高校時代の研究仲間を集め、自宅で研究を続けていたという。
また、高校時代に参加したプログラムや研究で得た「外」とのネットワークを活用し、大学以外の取り組みにも積極的に参加している点も彼らの特長だ。佐藤さんも高校時代に参加した「マリンチャレンジプログラム」で後輩の研究活動をサポートする研究コーチに挑戦したり、科学技術で社会の課題を解決することを目指すベンチャー企業や研究者が集まる「テックプランター」や、多様な企業や研究者・自治体が集まる「超異分野学会」に積極的に足を運んできた。
そして、2023年には自らもアントレプレナーとして「テックプランター」に参加した。「これまで海への興味で研究に打ち込んできた私にとって、自分の興味が社会の課題解決と繋がるかもしれないという考えは新鮮で、ワクワクしたので参加を決めました」と佐藤さんは話す。同大会で掲げたビジョンは「魚の資源量調査をもっと効果的にし、海洋資源の保全につなげる」だ。
私たちの仕事は
面白い問いを立てること
この挑戦を通じて、地元の漁業者や海洋関係企業等にヒアリングをし、どのスケールでデータがあるとよいか、現場のニーズを知り、漁業者には技術の発達や政府の活動がほとんど伝わっていない現実も知ったという。社会実装には、技術の開発だけでなく、漁業者・行政・研究者の三者間のデータ共有の仕組みや、効果的なデータ活用の方法を開発することが必要なのだ。
「生成AIで解析やコードの開発は研究者の仕事ではなくなったと感じています。私たちの仕事は、生成AIに投げ込む、面白い問いを立てることなんだと思います。そのためには、いろんな世界を知っていることが強みになるのだと気づきました」。
例えば生物の事を知っている、モデル化のことがわかる、実測もできる、この3つのうちの1つを極めている人材は珍しくないが、3つともそこそこわかるという人は実は少ない。
佐藤さんは4月から企業に就職し河川や海に関わる仕事を始める。「海は私にとって、一生興味が尽きない場所だと思います。海を起点に新しい事にどんどん挑戦し、どんな場所でも面白い問いを出し続ける『研究者』でありたいです」。
(文・楠 晴奈)
